嘘と愛

 血痕は零と同じ血液型でO型だった。
 しかし、犯人が捕まった時誘拐された子供の一人である桜の方は既に死亡していることになっていた。

 顔が分からない赤ちゃんの遺体が発見され、その赤ちゃんの血液型も同じO型だったのだ。
 産まれた月日も同じくらいと判断され、間違いないとの事で桜は死亡したことになっていた。


 発見した時の零は酷い怪我だった。
 あれは故意にされたものだろうと、隆司は判断していた。

 しかし警察で捜査しても、どこの病院なのかも不明で、誘拐されたと被害届けを出していた家族は無事に見つかり1人は死亡したとの事で、その後は犯人逮捕まで何も動きがなかった。

 隆司は直感的に、零が桜で殺されそうになったが、何らかの事情で犯人はとどめを刺せないまま川岸に置いて逃げて行ったと思った。
 逮捕された妹は犯人ではないのではないかと、感じていた隆司。



 間もなくして妹が誘拐犯、並びに、乳児殺害として懲役が下された。
 何も言わずに従った妹だった。


 だが判決が下されて3ヶ月して。
 当時出産に立ち会ったのが、別の医師だったことが判明した。

 急遽海外出張を命じられ、帰国してとんでもない事が起こっているのを知って、病院を辞める覚悟で証言に来た医師。

 その医師は草加部瑠璃(くさかべ・るり)と言う女医だった。
 瑠璃は双子を産んだのは、妹の方で姉は妹に産み渡して欲しいと頼んでいたと証言した。

 助産師が目撃したのは、きっと、子供との別れに授乳をしていたのだと。
 妊婦検診の記録も瑠璃は提出して、妹の無罪を証明した。
 取り調べていた担当刑事も、妹を見てなんとなく出産後ではないかと感じる部分もあったようだ。
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