嘘と愛
取り調べ中に何度も倒れてしまう事もあり、貧血を起こしていた事や、母乳らしきものが出ていた事もあった。
姉の方を見ると、とても出産後には見えない事もあった。
刑が下された後も、体調が優れなかった妹に刑務官が諭すように聞き出すと、瑠璃の証言もあり、妹はやっと自分ではない事を話してくれたのだ。
間もなくして妹は無罪を認められ釈放された。
だが、その事実の公表を頑なに拒んでいた。
自分は犯人のままで構わない、もう平穏に暮らしている家族を再びあんな酷い事件に巻き込まないで欲しい…そう言いだし、公表をしないまま無罪釈放された。
その後の妹の行くへは全く分からないままだった。
誘拐事件はまた謎を残したまま、迷宮入りになって行った。
15年して、隆司は警察署長になった。
それを機にもう一度、未解決なままの誘拐事件を調査していた。
当時の担当医師として、初めに証言した小野田健太(おのだ・けんた)は誘拐事件の後、妹が逮捕されてから間もなくして事故死していた。
妹の無罪を証言した瑠璃から、もう一度詳しく聞き出していた隆司は。
姉と妹のとんでもない取引を知った。
瑠璃は当時のやりとりをICレコーダーで録音していた。
姉の名前はディアナ。
妹はイリュージュ。
戸籍の上では双子の姉妹でも、ディアナとイリュージュは血が繋がっていない異母姉妹。
父親の後妻として再婚した母親が連れてきたイリュージュ。
偶然にもディアナと同じ年で、誕生日も1日違いで血液型も同じ。
双子だと言っても誰も疑わなかった。
表向きは仲良し姉妹だったが、裏ではそうではなかったと噂もある。
父と母は、ディアナとイリュージュが高校を卒業した頃に病死していて、ディアナは大学に進学し宗田ホールディンに入社した。
そしてイリュージュは、自分の力で大学に進学し弁護士を目指し法律事務所で勤務しながら試験を受けていた。
2度司法試験に落ちていたイリュージュだが、諦めずに弁護士を目指してた。