嘘と愛
瑠璃の話しから、隆司は真犯人が未だに何食わぬ顔をして暮らしていると思うと、許せない気持ちが込みあがっていた。
しかし年月が経過していて、当時の病院も助産師が変わっていたりで、確証に繋がる事を得られないままだった。
スクスクと育ってゆく零を見ていて、隆司は零の瞳の色が綺麗な緑色でちょっと変わっていると気づいた。
素直で明るく元気な零は、15年経過して高校生になった。
5年前に喜代華は病気で他界して、零と2人暮らしで、隆司は仕事が仕事だけに不規則でいつも零に1人で寂しい思いをさせていることに罪悪感を感じていた。
しかし零は、寂しさを感じさせないくらい明るくて、いつも隆司の為に美味しい料理を作ってあげたいと言って、片手でも頑張ってご飯を作ってくれていた。
高校生になった零は隆司と同じ警察官になると言って、張り切っていた。
だが隆司は女の子の零に、警察官になって欲しいとは望んでいなかった。
隆司は零には絶対に幸せになって欲しいと望んでいた。
それ故にあの誘拐事件の謎を絶対に説いて、真犯人を見つけ出すことに必死だった。
零が高校を卒して大学に進学する時。
奨学金を申請する時に、支援してくれる人が見つかった。
顔をも名前も教えてくれない事になっていたが、学費を全面的に出してくれて卒業するまで支援すると約束してくれたのだ。
隆司も余裕がないわけではなかったが、非常に助かり無事に零を大学に進学させることが出来た。
短大を卒業して、その後、零は無事に隆司と同じ警察官になった。
そして零も。
隆司がずっと追っている誘拐事件の事を、密かに調べ始めた。
もう22年経過している事件。
しかし零も知りたかったのだ。
どうして1人は殺された事になり、1人は無事なのか。
調べてゆくうちに、とんでもないことが次々に明るみになってきた。