嘘と愛
 そのまま部屋に戻った零はベッドにゴロンと寝転んで、暫く天井を見ていた。


 初めて来たのに、とても居心地がいいのは何故だろう?
 今日突然来ることが決まったのに、この部屋は何故用意されていたのだろうか?

 着替えも用意してありサイズもピッタリだった。
 下着のサイズはフリーサイズだったが、零が片手でも着やすい物が用意されていた。



 ベッドから起き上がり、零はクローゼットに歩み寄った。

 扉を開いて中を見ると、数着のスーツが用意されている。

 ブラウスはかぶりのものでボタンも数個しかないものだが、デザインは零に良く似合うもので色合いもピッタリである。

 黒系のパンプスと普段履けるスニーカーと靴もある。

 足のサイズは零にピッタリ。

 普段着れる服も、明るい色が多くスラックスよりもワンピース系が多くある。
 どの服も真新しく、ちょっと高級なブランドのものばかり。


 
 娘の椿に買ったものではないだろうか?
 と、零は思った。


 だが見ていると、なんとなく優しさを感じる。
 この感覚どこかで覚えがある…。

 そう思った零はそっと目を閉じてみた。



 目を閉じた零に見えてきたもの… …

 それは大学生になった時だった。
 あまり零は隆司に欲しい物を言えなかったことから、新しい服を買う事もなく持っている服を着回ししていた。

 だが大学の入学式の時。
 真新しい服を着てい来る人が多い中、零はずっと着ている服の中かでオシャレなものを選べばいいと考えていた。

 しかし入学式3日前。
 突然送られてた荷物に、零は驚いていた。
 送り主は名前を出さない支援者から。

 その中には春らしいスーツ一式が入っていた。
 そして普段も着ることが出来る服も数着あり靴も入っていた。

 カバンも入っていて、片手がない零でも楽に使えるショルダーバッグで肩の部分にクッションのようなものがついていて楽な鞄である。

 サイズもピッタリで、色合いも似合うものばかりで零は驚いていた。
 きっと隆司がサイズを教えたのかもしれない…。

 そう思って、特に気にしないようにしていた零。
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