嘘と愛
宗田ホールディング自社ビル前。
先ほどの女性が歩いて来た。
1階エントラスを入ると受付に向かう女性。
エントラスは、広々とした空間に壁には有名画家が描いた肖像画や風景画が飾ってあり、来客用のスペースもゆったりと用意されていて、座り心地の良い椅子にオシャレなガラスのテーブルが設置されている。
大きな窓にはオシャレなレースのカーテンが両開きに、かけてあり、どこかの高級ホテルのロビーを感じさせるような雰囲気である。
受付もゆったりとスペースが取ってあり、受付嬢は若手の女子社員が2人いる。
先ほどの女性がゆっくりと、受け付けに歩いて来た。
受付にいる若い受付嬢は、歩いてくる女性を見て驚いて目を見開いていた。
「すみません、社長様はいらっしゃいますか? 」
透き通る爽やかな綺麗な声で、丁寧な日本語で尋ねる女性に、受付嬢も息を呑んだ。
「突然申し訳ございません。私、金奈警察署の刑事課の水原と申します」
そう言って女性は警察手帳を見せた。
警察手帳には、水原零(みずはら・れい)と書かかれていて、証明写真も貼ってある。
間違いなく金奈警察署の刑事である証明する警察手帳に、受付嬢も驚いている。
「お待ち下さい」
受付嬢の1人が内線をかけた。
「お待たせしました、社長室へお越し下さいとの事です」
「いえ、社長室ではなく。ここで待たせて頂けますか? 」
「え? 」
「2人きりの空間ほど、怖いものはないと。ある人から、教わっていますので」
「はぁ…。それでは、あちらでお待ち下さい」
女性こと零は、待合室の椅子に座って幸喜を待つ事にした。
しばらくして。
エレベーターで幸喜が降りてきた。
歩く姿も爽やかで、がっちりとした逞しい体系にシックな紺色のスーツに身を包んでいる姿は思わず二度見したくなる。
優しそうな面長の顔だちで、目元はクールな切れ長の目で優しい紫のような瞳をしている。
サラサラの茶色い髪が優しさを感じさせてくれる。
とても50歳近くの男性とは思えないほど若々しい幸喜。
「お待たせしました」
ちょっと低めの渋い声が聞こえて、零は立ち上がりゆっくりと幸喜に振り向いた。
目と目が合うと、幸喜はドキッとした。
だが、零は幸喜を見ると眼鏡の奥でちょっとだけ鋭い目になった。