嘘と愛
生きていると信じていた
「話したいことは、さっきも話してしまったのだけど。僕は、ディアナとは入籍していない。ディアナは、僕と結婚していると思っているけどね。だから、僕との子供が欲しいって言いだしたんだ。でも、全く関係を求めて来ることはなく。体外受精で子供を作ろうって、言い出したんだ。入籍していなのに、子供を作るってどうなんだろう? って思たけど。表向きは結婚した事になっているから、後継ぎの話しなんかも出て来たから。体外受精なら、いいのかもしれないって思って。承諾したんだ。…3ヶ月して、無事に受精卵が出来て翌月には妊娠したとディアナは言った。なんとなく違和感を感じたけど、僕はそのまま受け入れていたんだ」
そんな話を聞かされても…あんたが私を捨てたことは変わらない…
そう思った零は、ギュッと唇をかみしめて黙っていた。
幸喜はそんな零の背中をじっと見つめていた。
「子供が産まれて。産まれた子供が双子だったんだけど、僕はとっても感動してしばらく涙が止まらなかったよ。でもね、その時僕はディアナが産んだ子供ではないって直感的に感じたんだ。間違いなく、僕の子供なのは確信したけど。母親はディアナではないって感じた。だから、産まれた子供は僕だけの子供として籍にいれた。…でも3日後に、誘拐事件が起こってしまい。子供は2人とも誘拐されてしまった。1人は無事に戻ってきたけど、もう1人は戻って来ないままで。数日後に顔が分からない、赤ちゃんの遺体が見つかって。血液型と産まれた時期から、見つかっていないもう1人の子供だと断定されたんだ」
チクりと零は、切断されている左手首に痛みを感じた。
この痛みはきっと、産まれて間もないとき傷つけられた痛みだろう…。
零はそう思った…。
「断定されても、僕は信じられなくてね。死亡届けを出さなかった。…なんとなく、分かったんだ。どこかでまだ、子供は生きているってね」
何も言わない零の傍に寄り、幸喜は零の左手首にそっと触れた。
義手をつけていない左手首に幸喜が触れると、とても優しい暖かさが伝わってきて…。
俯いていた零の頬に涙が伝った。
そのまま幸喜は零をギュッと抱きしめた。
「…桜…」
桜と呼ばれると、零の胸がキュンとなった。
「判るよ、初めて会った時から僕のハートが教えてくれていたから。君が桜だって」
違う…
そう言いたい零だったが、なぜか言葉が喉の張り付いて出なかった。