嘘と愛
「イリュージュは私の妹だから、何かあればすぐに私の元に連絡が入るのよ。それに、身内の私のほうが、何でも情報は提供されるわ。イリュージュが見つかれば、すぐにでも別れてあげる。何も関係は持たなくていいわ。イリュージュを見つけたい気持ちは、私も同じだから」

 と言ってきた。

 迷った幸喜だが、なんとなくディアナの言う通りにしてしまった。
 結婚式はしなくていい、入籍だけでいいとディアナは言った。

 幸喜の両親である夏樹と空は、あまり快い返事ではなかったが、幸喜が選んだ人ならと賛成していた。

 ディアナの両親は既に他界していたため、何も問題なく幸喜とディアナは結婚した。


 結婚してから、ディアナは宗田家に住むようになり仕事も辞め専業主婦になったが、家にいることはなく幸喜名義のカードを使って海外旅行ばかり行っていた。


 
 結婚して3ヶ月経過した頃。
 夏樹と空に「まだ子供は作らないの? 」と言われた幸喜は、てきとうにごまかしていた。

 だがディアナは突然「子供が欲しい」と言い出した。

「体外受精なら、関係を持たなくても子供が作れるわ。そうしましょう」

 とディアナが提案してきた。
 イリュージュが見つかるまでの結婚と言っていた。
 でも、子供はまだ? と待ち望んでいる夏樹と空がいる。
 体外受精ならいいのかもしれない…

 幸喜はそんな気持ちで、ディアナが提案した体外受精に応じる事にした。


 そして2ヶ月経過した時に、ディアナが「無事に妊娠したわ」と言い出してきた。
 何となく違和感を感じた幸喜だったが、母子手帳や妊婦検診のエコー写真などを見せられ、赤ちゃんが育っているのを見てゆくうちに実感してきた。

 妊娠して8ヶ月経過する頃にディアナが。

「どうやら早産になりそうなの、帝王切開だから陣痛が始まる前に出産しなくちゃいけないらしいわ。明日から入院することになったの」

 と、突然出産に向けての準備が始まった。

 お腹が大きくなっても、つい最近まで海外旅行へ行っていたディアナがもう出産? と、幸喜は疑問を感じていた。



 その2週間後。
 無事に双子の赤ちゃんが生まれた。
 帝王切開で生まれた赤ちゃんだったが、幸喜はなんとなくディアナが産んだようには思えなかった。

 生まれたての赤ちゃんを見て、ずっとどこかに違和感を感じていた幸喜。
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