嘘と愛
 その後。
 誘拐事件が起こり、椿だけが無事に戻って来ても、幸喜には違和感しか残らなかった。
 桜は死亡して顔の分からない遺体を見せられても、信じられないまま過ごしてきた。
 誘拐事件並びに乳児殺害事件の犯人として逮捕されたのが、妹のイリュージュであっても幸喜には信じられず。

 ずっと22年間真実を探ろうとしていた。

 零が会社に来てくれて。
 真実が動き出したと感じた幸喜。





 朝になり。
 カーテンから差し込む朝日で目を覚ました幸喜。
 
 スヤスヤと心地よい寝息が聞こえて、そっと隣りを見ると、可愛い寝顔で眠ってい零がいた。

 その寝顔はイリュージュの寝顔と似ている…。
 
「…もう終わりにする。…22年の過ちを、これ以上は繰り返さない為に…」

 幸喜は零を起こさないように先に起きた。


 零が目を覚ましたのは7時を回る頃だった。
 幸喜の姿はなく、一瞬夢だったのかと零は思った。

 だが、隣には確かに幸喜が寝ていたぬくもりが残っていた。


 ピピッ…。
 携帯の音が鳴って、零はベッドから出て鞄の中から携帯電話を取り出した。

 メールが届いていて開いてみると。
 そこには大雅の妹の椿と、栞がカフェで会っている写真が添付されていた。

 そしてその後、椿と栞がカフェを出てどこかに一緒に行く姿。

 2通目のメールには、ガラの悪い男に囲まれている栞が写っている。

 そして一人の男が栞を殴っている姿が…。
 
 その後に、椿と一緒に病院に行く栞の姿も写っている。

(大丈夫よ。大雅さんの無実はもう、証明されるから安心して…椿)

 メールの送り主は椿と書いてある。

「…椿…有難う…」

 零はメールの返事を送った。


 メールを送って着替えを済ませると、メールの返信が返ってきた。
 その返信を見て、零は決意した目をした。
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