嘘と愛
 しばらくして、朝食を済ませた零に、幸喜が

「どこか行きたい場所はある? 」

 と聞いてきた。

「じゃあ、一緒に来て欲しいところがあります。いいですか? 」
「ああ、いいよ」

 快く承諾してくれた幸喜。




 出かける準備をして、幸喜と零が向かったのは。
 金奈市の外れにある聖マリー病院。

 ここは長期療養施設である。
 長い間病気で治療中の患者や、余命が残り少ない患者が医療する施設。

 
 最上階の南向きの、眺めがいい部屋に1人の女性がいる。
 金色の長い髪が腰まで届き、片側で結っている。
 ピンク色のパジャマに白いカーティガンを羽織っているが、かなり痩せているのが分かる。

 顔立ちが零と似ている感じで、瞳は緑色。
 見るからに綺麗な顔立ちで、外国人のように見えるがその美しさはまるで天使のようである。

 ベッドの枕もとに書いてある名前は。
 一柳椿(いちやなぎ・つばき)と書いてある。

 コンコン。
 ノックの音に椿は嬉しそうに微笑んだ。

「どうぞ、入って下さい」


 椿が返事をすると、零と幸喜が入ってきた。

 椿は幸喜を見ると、嬉しそうに微笑んだ。

 幸喜は椿を見ると、驚いて息を呑んだ。

「…イリュージュ…」

 小さな声で呟いた幸喜。
 そんな幸喜を見て、椿はまた嬉しそうに微笑んだ。

「初めまして…お父さん…」

 お父さんと呼ばれると、幸喜の胸が熱くなってきたのを感じた。

「…椿…だよね? 」

 尋ねられると、椿はゆっくり頷いた。
 頷く姿は昔のイリュージュにそっくりで。

 胸がいっぱいになった幸喜は、傍に歩み寄るとギュッと椿を抱きしめた。

「…良かった…生きていてくれて…」

 抱きしめている幸喜の声が上ずっている…。

「お父さん…。私も、生きているうちにお父さんに会えて嬉しい…」
 
 ギュッと抱きしめた椿は、とても痩せている。
 顔色も良くない…。

 療養施設にいると言う事は、重度な病気にかかっていることは間違いない。

「…椿。…今まで、どうしていたんだ? 」
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