嘘と愛
「児童施設にいたのだけど、養女にもらってくれた人が居て。ずっと育ててもらっていたの。一柳さんって言う人で、立派な弁護士さんなの。奥さんは、15年前に亡くなっていて私の事、ずっと1人で育ててくれていたの。私、なんとか恩返ししたくて。同じ弁護士を目指したのだけど、病気になってしまって…。赤ちゃんの時、風邪がひどくなって肺炎になってから。ずっと、病弱で。心臓が悪くなってしまったの。…だから今は、ここにお世話になっているの」
「そうだったのか…」
「桜とは、高校生の時同じ学校だったの。その時、なんとなく気になって。話しかけて仲良くなったら、私と同じ環境だったからもしかしてって思ったら。本当に桜だったから、びっくりしたわ。ずっと一緒に、お腹の中にいたんだもん。絶対間違いないって、思ったけど。桜の左手に触れたら、ちゃんと見えて来たから確信したのよ」
話している椿は、昔の幸喜とよく似ている。
物事をハッキリ言い、明るく前向きで先の事が見えている幸喜とそっくりである。
零は顔は幸喜に似ているが、内面はどうやらイリュージュに似てるようだ。
本音をなかなか言わないけど、とっても優しくて素直な零。
やはり双子だからだろうか、すぐに打ち解けあえたのは。
「今日は来てくれて有難う。桜から、お父さんを連れてきてもいいかと聞かれて。すごく嬉しかったの」
「僕も会えて嬉しい。ねぇ、これからは好きなときに来てもいいかい? 」
「来てくれるの? もちろん大歓迎よ」
嬉しそうに笑っている椿を見て、零も喜びが溢れていた。
ここにイリュージュがいれば、本当の家族が揃う事になる。
その頃。
警察署には、栞がガラの悪い男に殴られている写真が送られていた。
栞が提出した診断書から、病院に問い合わせたところ。
拳の大きさが大雅とは一致しなかった。
栞は性的暴行も訴え出ていたが、その形跡はなく。
警察は栞の偽証を確信した。