嘘と愛

「幸喜。大雅が、迎えに来たって言っているの」

 空が幸喜に向かってそう言った。
 
 幸喜はちょっとキョンとした目をしたが、すぐに笑顔を浮かべた。

「ごめんね、大雅。黙って、お前の大切な人を預かってしまって」
「別に…。もういいよ、俺は帰るから…」

 可愛くない言葉を言って、大雅は帰ろうとした。

「ちょっと待て」
 
 幸喜は帰ろうとした大雅の手を掴んで引き留めた。
 
 なんだよ! とムッとした顔をしていている大雅だが、恥ずかしいのか、視線を反らしたまま幸喜を見ようとはしなかった。


「良かったな、容疑が晴れて。でも、父さんはお前を信じていたから。その辺りは、何も心配していなかったよ」
「別に…心配してもらう事なんて、何もないけど…」

「何言っているんだ。僕はお前の父親だぞ、心配して当然じゃないか。お前が辛い思いをしているんじゃないかって、何か力になれないかって思っていたよ」
「…別に…辛い事なんて…」

 視線を反らしている大雅だが、どこか泣きそうな目をしていた。

「ちょっと、話そうか」


 幸喜はそのまま大雅と一緒に庭に向かった。

 空はそんな2人を見て、やれやれとため息をついて家の中へ入って行った。





 庭にはテラスがあり、テーブルと椅子がある。
 暖かくなってくると、ここでお茶を飲んだり、ゆっくりと本を読んだりして過ごすことも多い幸喜。


 大雅がまだ小さい頃は、よくこのテラスで一緒に遊んでいた。
 だいぶん暖かくなってきて、夜でもテラスに出ても心地いいくらいの温度になってきた今日この頃。

 暗くなるとテラスには、人を感知して電気もつようになっている。
 部屋の中の電気も照らされて、綺麗な星空を見ながらくつろぐことも出来る。


 テラスの椅子に座って。
 大雅はちょっと複雑そうな顔をしている。

「大雅。お前がずっと、我慢していることは解っていたよ。僕よりずっと、勘が鋭くて不思議な力を持っている事は、大雅が養子来てくれた時から気づいていたよ」

 気づいていたんだ…。
 別に隠している気はなかったけど…。
 可愛くない顔をして大雅はそう思った。
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