嘘と愛
夏樹は困ってしまい、兄の一樹に電話をして来てもらった。
一樹と夏樹に止められて、ようやく大雅と幸喜の喧嘩は収まった。
2人共息があがるまで喧嘩して。
殴りあって顔は腫れてしまい、唇は切れていた。
夏樹がリビングのありざまを見て、驚いていたが、大雅も幸喜も意地を張ってその日はどちらも謝る事はしなかった。
翌日になり。
大雅が熱を出してしまい、幸喜は仕事を休んでずっと看病していた。
殴り合いの喧嘩をして、幸喜の口元は腫れていて顔にも擦り傷ができていた。
大雅も同じようにあちこち、打ち身や痣が出来ていた。
熱に魘されながらも、ずっと傍にいてくれる幸喜を見ていると、何となく大雅の気持ちの中で申し訳ない気持ちが強くなってきた。
夕方になり。
熱が下がった大雅は素直な気持ちになっていた。
傍にいた幸喜は、うつらうつらと居眠りをしていた。
そんな幸喜を見ている、一人で何もかも背負って大変なのだと感じた…。
大雅がじっと見ていると目を覚ました幸喜。
「気分はどう? どこも、痛くないか? 」
そう尋ねた幸喜は、いつもの優しい口調に戻っていた。
「大丈夫だよ。…ごめんなさい…」
反省した大雅は素直に幸喜に謝った。
「謝ることないよ。喧嘩は両成敗。僕も悪いんだ。いつもお前を信じているけど、心配でたまらくて。昨日は、その想いが溢れてしまっただけだよ。でも、お前と同じ痛みを分かち合えて嬉ししかったよ」
そう言ってくれた幸喜に嘘はなかった。
それ以来、大雅は夜遊びをためて、まじめに勉強するようになり成績も上がってきて金奈市では一番レベルが高い高校へ進学して、推薦で国立大学へ進学して警察官になった。
家族を守りたいし、この町も守りたいからと大雅は言っていた。
だが突然警察官をやめて、大雅はしばらく引きこもっていた。
幸喜が誘ってくれたこともあり、ちょっと渋っていたが宗田ホールディングで働くようになった大雅。
口数も減って、また心を閉ざしてしまった大雅を幸喜はそっと見守ってきたのだ。
昔を思い出した大雅は、ちょっと目が潤んでいた。
「大雅。お前が言っていた、僕にそっくりな人って。お前が一番、今心から愛している人だろう? 」
そう尋ねられると、大雅は赤くなった。