嘘と愛
「あ、今夜はすき焼きなの? 」
幸喜が大雅を連れて戻ってきた。
「あら大雅。一緒にご飯食べるでしょう? 」
「あ…うん…」
「良かった。沢山作ってしまったの。大雅が食べてくれるなら、助かるわ」
大雅は零を見た。
零はちょっと照れたような目をしたが、そっと微笑んだ。
その微笑みを見ると、大雅は安心したような目をした。
夕食を食べて帰ろうとした零と大雅だが、幸喜達に泊って行くように言われて結局泊る事にした。
「零ちゃん、一緒にお風呂入らない? 」
お風呂の準備をして、空が零に声をかけて来た。
「いえ一人で入りますので、先に入って下さい」
「いいじゃない、背中洗ってあげるから。一緒に入ろう」
空は零を引っ張ってお風呂場に向かった。
大雅はちょっと複雑そうな顔をして、空と零がお風呂に行くのを見ていた。
「大雅、どうしんだ? 」
幸喜が声をかけると、大雅はハッとして我を取り戻したようだ。
「あ、いやなんでも…」
「ん? 」
何か様子がおかしい大雅を見て、幸喜はちょっと笑った。
「大雅、零ちゃんと一緒にお風呂に入りたかったのか? 」
「ち・違う! 」
「顔に書いてあるぞ、おばあちゃんに盗られたって」
「そ、そんなじゃないって」
赤くなっている大雅を見ていると、幸喜はなんだかかわいく思った。
その夜。
大雅は自分の部屋で寝ていたが、どうしても零が気になり部屋に尋ねて行った。
大雅が部屋に来ると、零は嬉しそうな笑みを浮かべた。
ギュッと零を抱きしめると、大雅はそっとキスをした。
「ごめんな、心配かけて」
「ううん、大丈夫。信じていたから」
額をくっつけて、目と目を合わせて微笑み合う大雅と零。