嘘と愛
頼ってもいいよ
大雅は栞からの告白を聞いて、暫くの間考え込んでいた。
椿は中学生の時怪我をして以来、どこか冷めた目で見ているところが多かった。
高校生になると表面では「お兄ちゃん」と言って普通に兄弟のように、大雅に接していたが、時々2人きりになると抱き着いて来たり、ちょっと迫るようなことをしてきたこともあった。
家を出る時は非常に驚いていて。
お金を貸して欲しいと言ってきて、最後にカフェで会った時はどこか暗い感じを受けた。
人を使って冤罪を着せようとするのは、何故なのだろうか?
とりあえず、しばらく様子を見る事にした大雅。
ディアナの事件も、あれから事件は落ち着いていた。
引き続き調査は行われているが、新たな証拠は見つからず、情報もないままだった。
金奈警察署。
仕事の合間の休憩のため、零が休憩室にやって来た。
自販機でパックの珈琲を買った零は、ストローをとろうとテールの上に置いた。
すると…。
スッと誰かの手が伸びてきて、珈琲を手に取った。
ん? と、零が見上げると。
爽やかな感じのイケメン男性警察官が立っていた。
優しい目をして、茶色い髪が柔らかそうでサラサラしている。
綺麗な顔立ちで、見つめられると虜になりそうな切れ長の目をしている。
「はい、どうぞ」
低めの渋い声が優しく響く。
彼はストローをさして零に珈琲を渡してくれた。
「有難うございます」
珈琲を受け取る零を、彼はとても優しい目で見つめていた。
「僕、生活安全課の城里聖司(しろさと・せいじ)です。よろしくお願いします」
「はい、刑事課の水原零です」
「知っていますよ、ずっと見ていましたから」
「え? …」
聖司はそっと零を見つめて、ニコッと笑った。
「貴女がここに来る前から、ずっと知っています」
「はぁ…」
聖司は缶珈琲を買うため自販機に向かった。
「あ、待って下さい」
零はお金を取り出して、自販機にいれた。
「お礼です。好きな物を買って下さい」
「そんな事、気にしなくていいのに」
「いえ。どうぞ」
聖司はそっと微笑み缶珈琲を買った。
それを見届けると、零はその場を去って行った。
去り行く零を、聖司はそっと見ていた。