嘘と愛
 

 ディアナの病室を出てきた幸喜は、フッとため息をついた。

「…イリュージュ。…君は全てを知っているのだろう? …だから…今でも姿を消しているのだろう? 」 

 そう呟いた幸喜は、そのまま歩いて行った…。




 
 数日後。
 新聞やニュースで身元不目の女性が遺体で発見され、その女性の名前が判明し公表された。

 殺害された女性は小山奈美(こやま・なみ)54歳、助産師。
 駅前の歩道橋からの転落死だった。
 目撃者は少なく、フードを被った女性と証言があるがハッキリした証拠がまだ上がってきていない。

 近くのカフェで深夜、奈美と話していた女性がいることが判明しているため、その女性の行くへを追っている。

 奈美は金奈総合病院で30年近く勤務していたが、10年前に急に退職して、それからは個人の産婦人科で助産師をしていた。
 最近、誰かに脅されていたのか大金を頻繁にATMから引き出しているのが確認されている。
 殺害される前も、大金をATMから引き出しているのが判明している。
 同僚の話しでは、誰かから良く電話があり、そのたびに奈美は怯えていたとの証言がある。




 宗田家。
 広いお屋敷のような家に、現在は幸喜と娘の椿22歳と、息子の大雅30歳が住んでいる。

 今日は休日のため、のんびりと過ごしている宗田家。

 休みの日は椿が朝ご飯を作ってくれる。

 丸顔でぱっちりとした目をして、長い黒髪をポニーテールに結って、可愛い感じに成長した椿。
 背丈は160㎝前後で、体形は普通体系。
 タイプ的にはどこにでもいる女の子のようだが、幸喜には似ていない。



 休日の宗田家の朝はパン。
 トーストを焼いて、目玉焼きとサラダとウインナーを焼いて、温かいコーンスープがある。

「食べたら食器洗っておいてね、私今日は友達と出かけるから」

 そう言って、椿はさっさと食べ始める。

 幸喜は新聞を読みながら食べていて、大雅はスマホを見ながら食べている。

「ちょと、お兄ちゃんもお父さんも、ご飯時くらい新聞もスマホもやめてよね」
「あ、すまん」

 新聞をたたんで、幸喜は食べ始めた。

 大雅は椿の言葉を無視してスマホを見ながら食べている。

「お兄ちゃん! 聞いている? 人の話し」
「ん? 聞いているけど? 」

「もう、だったらスマホはやめてよ」
「うっせぇなぁ。無駄に見てんじゃねぇよ。 毎日毎日、なんだかんだと事件ばかり起こってんだぜ。ちゃんと目を通しておかないとな」

 パンをかじりながら、大雅はスマホを見続けている。

「お兄ちゃんは、警察官辞めても癖が治らないのね」

 呆れたようにため息をついて、椿は食べ終わった食器をシンクに置きに行った。

「私出かけるから、あとお願いね」

 リビングを出て行った椿。

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