嘘と愛
爽やかなイケメン聖司。
実はこの聖司は大雅の後輩である。
大雅が警察官を辞める1年前に入ってきた警察官。
大雅は聖司をとても可愛がっていたようだ。
大雅が警察官を辞めて、残った聖司はずっと22年前の事件を追っていた。
隆司とも親しく情報交換をしていた聖司。
零が金奈警察署に来た時は、聖司は別の署に配属されていたが、零が刑事になってから金奈警察署へ戻ってきた。
生活安全課に配属されて、ずっと零の事を見守っているのだ。
夜になり、残業を終えて零が帰る頃。
急な雨が降っていた。
傘を持っていない零は、空を見上げたが、当面止みそうにもない雨にちょっとため息をついていた。
「今帰りですか? 」
声がして振り向くと、そこには聖司がいた。
制服を脱いで私服の聖司は、若々しい青年のようだ。
「傘、持っていないようですね? 近くまで、送りましょうか? 」
「いいえ、結構です。迎えに来てもらいますので」
「迎えですか? 」
「はい」
聖司はちょっと目を細めた。
「じゃあ、迎えの人が来るまでの間。一緒にいてもいいですか? 」
「はぁ…」
なんなんだろう? 今日初めて会ったのに、前から知っていたようなことを言っていたし。…なんで私に近づいてくるのだろう?
零はそんなことを思いながら、大雅にメールを送った。
雨は酷くなり雨音が激しくなってきた。
「ロビーで待ちませんか? 雨が酷くなってきたので、濡れてしまいますよ」
と、聖司は零の手を引いて中に入って行った。
雨が降ってきせいで、ちょっと冷え込んできたようで寒さを感じた零は肩を竦めた。
そんな零を見て、聖司は自分の着ていた上着をそっと羽織らせた。
驚いて見上げる零に、聖司はそっと微笑んだ。
「ちょっと冷えてきましたから、羽織ってて下さい。女性は体を冷やしては、いけないので」
「…有難うございます…」
零はちょっと曖昧な返事をした。
ロビーの椅子に座って、零は大雅を待っている。
聖司は1つ席を離れて座っている。
「あの、水原さん」
「はい」
「水原さん、助産師殺害事件追っていますよね? 」
「はい、それが何か? 」
聖司は1つ分空いていた席を詰めて、零の真横に座った。
距離が近くなり、零はちょっと驚いた顔をした。
「助産師殺害事件。あの事件は…22年前のある誘拐事件に、関係していますよね? 」
ん? と、零は聖司を見た。
聖司は変わらない優しい微笑みのまま、零を見ている。