嘘と愛
ドライヤーの音に気づいて、大雅がやって来た。
「あれ? ドライヤー使っているのか? 」
「うん…。乾かしたほうが、いいって思って…」
片手でドライヤーをあてている零だが、なかなか乾かないようだ。
「ちょっと貸してみろ」
零が使っているドライヤーをとって、大雅が紙を乾かしてくれた。
「してほしい事は、ちゃんと言えばいいんだぞ。俺がいるんだ、1人じゃないだろう? 」
髪を乾かしながら大雅が言った。
「自分でも、なんとかできるんじゃないかと思って…」
「お前なんでそんなに、遠慮しているんだ? 俺は、お前にとって。そんなにまだ、遠い存在なのか? 」
「そうではなくて…」
髪が乾くと、大雅は櫛で零の髪を整えた。
「もっと頼ってくれていいぞ。頼られる方が、俺は嬉しいから」
サラサラしている零の髪に触れ、大雅は嬉しそうに微笑んだ。
「髪、伸ばしてみたらどうだ? 」
「長くすると、手間がかかるので…」
「手間がかかっても、俺がいるし。美容院に行くことだって、視野に入れれば何とでもなるぞ。ダメだって、決めつける事。もうやめよう」
ちょっと俯いている零を、大雅はそっと抱き寄せた。
「零…。もう、刑事なんか辞めないか? お前の気持ちも判るが。危ない目に合うのは、俺は嫌だ」
「…その事は、考えています。でももう少しだけ、時間を下さい。どうしても、やり遂げたいことがあって。それが終われば、刑事を辞めますから」
「じゃあ、あと2ヶ月って約束してくれないか? 」
「2ヶ月? 」
「ああ、この夏を超えたら刑事を辞めて欲しい。零がやり遂げたいことが、成されていても、成されなくても。そこをケジメにしてほしいんだ」
返事に迷った零だが、大雅に真剣な眼差しで見つめられると胸がキュンとなった。
「判りました…。そうします…」
ちょっと納得ができない気持ちもあるが、零は大雅の気持ちに従う事にした。
だいぶん謎は解けてきている。
2ヶ月あれば、たどり着けるだろう…。
零はそう思った。
翌日の昼下がり。
零は聞き込みの為、空港近くのホテルなどを回っていた。
同僚の刑事と一緒に聞き込みをしていた零だが、別々の行動で1人周りの商店街などに聞き込みにやって来た。
すると…。
零の後ろをついてくる、黒いフードを被った女性らしき人物が近づいて来ていた。
零は気づかず歩いていた。
すると…