冷たい雨
 委員会も無事に終わり教室に戻ると、加藤さんが僕を待っていた。

「もし良かったら、一緒に梓紗のお見舞いに行かない?
 白石くんもあんな風に教室飛び出して行ったから、梓紗、きっと心配してると思うよ。
 それに今日の委員会の報告も一緒にすればいいし」

 僕は加藤さん『一緒にお見舞いに行かない?』と言われたものの、半ば強引に拉致られる形で瀬戸さんの家に一緒に向かう事となった。
 瀬戸さんの家に向かう道中、色々と加藤さんから一方的に話を聞かされた。聞かされたと言うのは言葉が悪いかもん知れないけれど、僕が返事をする隙を与えない勢いで、加藤さんは一方的に色々と話をするから口を開くようにならなかった。

 加藤さんと瀬戸さんは小学校からの友達と言う事で校区が同じ、家もまあまあ近所と言う。
 進学先であるこの高校は彼女達の家から徒歩圏内で、朝の弱い加藤さんは少しでも朝は遅く家を出たいと言う理由で、瀬戸さんは昨年体調を崩し、その理由は加藤さんも知らないと言うけれど、自宅から無理なく通える学校という理由で進学を希望したらしい。
 本当なら瀬戸さんも、僕が本命で志願していた高校に余裕で合格する学力があるのは、この前の入試の結果を見れば明らかである。

 加藤さんの一方的な話を聞きながら辿り着いた瀬戸さんの家は、学校から徒歩で十分位の距離にある。
 住宅街の中の一角にある戸建て住宅だった。確かにこれなら無理なく通学出来る距離だと僕も納得がいく。
 学校までの通学路も、特に交通量が多い訳でもなさそうだし、街路灯もきちんと設置されているから仮に帰宅が遅くなる時も、きっとそんなに夜道が暗くなることはないだろう。
 
 加藤さんは瀬戸さんの家のインターフォンを鳴らした。
 少しして、応答があるかと思ったら直接玄関の施錠を解く音が聞こえ、その扉が開かれた。
 制服から普段着に着替えた瀬戸さん本人だった。倒れたと聞いていたけれど、もう動いても大丈夫なのか?
 病院に行ったのだろうか、家の人はいないのだろうか? 頭の中に沢山の疑問が湧き上がるものの、僕はそれらを何一つ口に出す事が出来ないでいる。

「梓紗、大丈夫? 白石くん連れて来たよ」

 玄関のドアから顔を見せる瀬戸さんは、明らかに調子が悪そうだ。顔色も良くない。血流が悪いのか、いつも以上に肌が青白く見える。
 着替えた普段着らしき服は、多分普通サイズのトレーナーにレギンス、膝丈のスカートと言ったごく普通の格好だ。でも、体型をかくそうとダボついたトレーナーならまだしも普通サイズのトレーナーでかなりダボついて見える。
 瀬戸さんの身体の細さを改めて感じ、本当にあの後教室で倒れて早退したんだと実感せざるを得ない。

< 16 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop