エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
恥ずかしげに答えた詩織に、矢城が目を細める。
迷惑そうではないので、ほんの少し期待が沸いたが、ククと笑われてしまった。

「おいおい、アラフォーのおっさん相手に血迷うなよ。詩織ちゃんは俺に助けられたから恩を感じているだけだ。それを恋愛感情だと勘違いしている。君は素直で騙されやすいな。もし俺が父親なら、心配で家から出せない」

矢城は余裕の態度で、缶ビールを喉に流し込んでいる。
先ほどは、ひと缶で少しも酔わないようなことを言っていたのに、「酔ったわ。早めに寝るか」と立ち上がった。

(もしかして、逃げようとしているの……?)

詩織はショックを受けていた。
大きく膨らんだ確かな恋心と、十日ほどの苦しい葛藤を勘違いにされたからだ。

一見優しいように見えて、きっぱりフラれるよりも傷つく対応だ。
その上、まるで子供扱いなのだから、らしくなくムッとしてしまう。

(こんな失恋の仕方は嫌……!)

矢城は詩織の脇を抜けて歩き出している。
その背に詩織が抱き着いた。

「詩織ちゃん!?」

矢城を戸惑わせてしまったが、詩織自身も大胆行為に驚いている。
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