エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
詩織のそういう表情を初めて目にして、矢城が戸惑っていたら、今度は柔らかい笑みを向けられた。
詩織の細腕が矢城の首に回しかけられ、背伸びをした彼女の唇が矢城の唇に軽く触れる。

「詩織ちゃん……」

一瞬のキスの後は、恥ずかしさに耐えているように真っ赤な顔を見せるから、矢城の鼓動はさらに高まった。

「わざと卑怯なふりをしないでください。そんなことをしても、私の先生への想いは消せません。本当に悪い男の人は、自分をいい人だと言います。君を大事にするからって、誠実なふりをするんです」

矢城は苦笑して頬を掻いた。
(一度、騙されたことで、学んでくれたのはいいことだが、参ったな……)

作戦変更を余儀なくされ、今度は真面目に諭しにかかる。

「正直に言うと、俺は詩織ちゃんが可愛い。子供扱いはしていない。異性としてそう思っている。だが、手を出さない。君の想いを受け入れられない原因は、もうわかるだろ?」

矢城の高校時代の苦い思い出。
恋人を守れなかった無力感と自己嫌悪……そこからくる怖れが、未来の恋を拒否している。

詩織が眉尻を下げて頷いた。

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