エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む

「矢城先生は怖いんですね？　私を守りきれない気がして」
「そうだな。ごめん……」

落ち込むことなく、詩織は首を横に振って微笑んだ。
やっと納得して諦めてくれたのかと思いきや、詩織の瞳になにやら前向きな光が灯る。
急に辺りをキョロキョロと見回したかと思ったら、「あ、やっぱり今日もいる」と呟いて、視線を後方に止めた。

「どうした？」という矢城の問いには答えず、「見ていてください」と両手を握りしめ、詩織が駆け出した。

十数メートル離れた路肩に、黒い普通乗用車が停車していた。
そこに向かっていく詩織がなにを意図しているのかはわからなかったが、危険な目に遭う前にと、矢城は慌てて後を追う。

「詩織ちゃん！」

待てと止める前に、彼女がその車の助手席の窓をノックしてしまった。
窓が半分開くと、詩織は中の若い男に文句をぶつける。

「またあなたですか。私はもう一般人なんです。芸能界に復帰することは絶対にありませんので、追いかけるのをやめてください」

どうやら車には雑誌記者が乗っていたようだ。
まだ追われていたことに矢城は顔をしかめる。