エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
「あっ!」と声をあげて後ろに倒れる詩織の体を、背中から抱き留める。

彼女より、矢城の方が鼓動が高まっているのではないだろうか。
ジュリアの店で飲んだ酒のせいにしてしまいたいが、勇気を見せてくれた詩織に対し卑怯な逃げ方はしたくない。
なにより抱きしめた華奢な体が愛しくて、離せそうにない。

「ああ……詩織ちゃん……」

呼びかける声に熱い吐息が交ざり、声がかすれた。

先ほどの勇ましさはどこへやら。抱きしめられていつもの調子に戻った様子の詩織が、もじもじと恥ずかしげにしている。

「先生、あ、あの……私はもう強くなりました。守れなかったらと矢城先生が心配する必要はないです。自分で自分を守りますから……」

それを伝えたくて突然、記者に食ってかかったようだ。
無鉄砲さに余計にハラハラさせられたが、詩織の勇気に感心もしていた。

(俺も勇気を出さないとな……)
そのような気持ちにさせられる。

大きく息を吐いた矢城は、詩織から腕を離した。
ゆっくりと振り向いた詩織が、期待と不安の入り混じる健気な瞳で見返してくる。

顔にかかる髪のひと束を手櫛で耳にかけてあげると、わかりやすく赤面した。
< 164 / 245 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop