エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
詩織は一瞬、ポカンとした後に、「あっ……」と思い至ったようだ。
夜目にもはっきりわかるほど、色白の肌が真っ赤に染まる。

今すぐに奪えないことを残念に思った矢城だったが、目を合わせることもできずに盛大に照れて動揺する可愛い姿が見られたので、それもいいと思い直した。

手を繋いで駅前のタクシー乗り場へと歩き出す。

「詩織ちゃん」
「はい……」
「そんなに恥ずかしがられると、余計に燃えるんだけど」
「えっ……?」
「俺に火をつけたのは君だ。覚悟しなよ」

返事ができないでいる詩織を、矢城はクスリと笑う。
ウブな彼女に合わせてやらなければとわかっていても、今夜ばかりは情熱がほとばしりそうで、自信がなかった――。


日付も変わり、真夜中の法律事務所は息遣いの音が響くほど静寂に包まれている。

シャワーを浴びてパジャマ姿の詩織は、矢城のベッドの端に腰を下ろした。
この部屋の入室禁止を言い渡される前、シーツの洗濯をしようと数回ノックしたことがあったが、招かれるのはもちろん初めてだ。

壁際は書棚四つと簡素なタンスひとつで埋まっており、溢れた仕事関係の書類が床に積み上げられている。
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