エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
衣類も同様だ。
セミダブルのベッドは部屋の中央で、壁に対して若干、斜めになっているのが無頓着な矢城らしい。

ベッドに寝転がって読書するために買ったのか、デスクライトがあり、床に積まれた本の上に置かれていた。
それだけを灯した部屋で、詩織は緊張から自分の体を抱きしめた。

部屋に染みついている矢城の香りも、彼の体重で沈んだスプリングも、「詩織ちゃん」と呼びかける吐息交じりの低い声も、なにもかもにときめいて、動悸の高まりは際限を知らないかのようだ。

体の芯は熱く疼き、触れられる前から肌が敏感になっているような気がする。
それが恥ずかしくて、隣に座る矢城の顔をまともに見られない。

矢城は部屋着の黒いズボンのみで、上半身は肌をさらしている。
シャワー上がりの髪はまだ濡れていて、肩にバスタオルを羽織っていた。
そのタオルで適当に髪を拭いた矢城が、丸めて床に放る。

それはまるで開始の合図のようで、詩織はさらに体を硬くした。

(ど、どうしよう……)

なんとか平静を取り戻そうと、体に回した腕に力を込める。
羞恥や緊張、期待が入り混じり、微かに震えていた。
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