エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
意識のほぼ全てが、胸と彼の指先に集中している。

「いいね、その顔」

矢城がククと笑った。
胸を見られそうで見られない時間を、いたずらに引き伸ばされる。
その意地悪な攻め方に、詩織は戸惑い始めた。

(先生は優しい人なのに……)

矢城の唇が詩織の頬にあたり、唇まで滑ると、チュッと吸いついて離れていく。
たまに際どい冗談を言う程度で、いつもは穏やかで誠実さを醸しているその瞳が、今は蠱惑的な企みを持ってなまめかしく弧を描いていた。

下唇を舐める姿に、詩織の肌が粟立つ。
それは怖さではなく欲情しているからで、初めて目にした矢城の扇情的な態度に、完全に飲まれていた。

詩織の息遣いが速くなり、矢城の口の端が吊り上がる。

「言い忘れていたが、これに関して俺は優しくないよ。詩織ちゃんの色んな表情を引き出したい。恥ずかしさに耐える顔も、快感に喘ぐ顔も、恍惚の中で乱れる顔も。君も知らない君を、俺だけに見せてくれ。それでやっと、俺のものだと実感できる」

その言葉だけでゾクゾクと、体中が痺れる気がした。
甘い吐息を漏らして頷けば、「覚悟ができたようだな」という言葉と共に押し倒される。

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