エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
意地悪なことを言っても、その手は優しい。
大切なものに触れるように詩織の肌を撫で、深いキスをし、全てを脱がせるのにたっぷりと時間をかけてくれる。

そのおかげで緊張や羞恥より、夢見心地の方が勝った。
甘い吐息が繰り返して漏れる。

(好きな人に求めてもらえるのって、こんなに幸せなんだ……)

ふと刺激が止んだので目を開ければ、真顔の矢城にじっと見降ろされていた。

普段、運動している様子のない矢城だが、腕も大胸筋も逞しく、余分な脂肪はついていない。
肌艶はよく、張りがあり、骨ばった指の大きな手は男らしい。
上下する喉仏も、整えていない髪も無精ひげも、詩織の目にはなにもかもが魅力的に映っている。

きっと他の男性も羨むような肉体を持っている矢城なのに、彼の自己評価としては高くないようだ。
詩織に跨ったまま、夜闇の中に矢城が迷いを吐露する。

「美術品のように綺麗だな……もったいない。俺のようなおっさんが食っちまって、本当にいいものか……」

(どうしても、それを気にするのね……)

詩織は後戻りしかけている彼を悲しく思ったが、逡巡する瞳を見上げて微笑んで見せた。

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