エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
同じクラスの仲良しの萌の母親に、詩織は心の中で感謝した。

「よかったね。楽しんできて」
「うん! 早めに行って早めに帰るって。おやつは萌ちゃんの家で食べるから今日はいらないよ。夕食前まで遊んでいきなさいって言われてる」
「そんなに長い時間? おやつまで……ご迷惑にならないかな」
「大丈夫。あのね、萌ちゃんのお母さん、昨日クッキー作りすぎたんだって。食べるの手伝ってって言ってた」

美緒から萌の話はたまに聞く。
夏休み前も学校帰りに萌の家に寄り、一緒に宿題をして遊んで帰ることが週二回くらいあった。

萌の母親の趣味がお菓子作りであるのは本当のようだが、『食べるのを手伝って』というのは方便だろう。
美緒から話を聞く限り、父親とふたり家族である美緒を哀れんでいる節がある。

しかし美緒は額面通りに受け取って、食べるのを手伝っているつもりでいるのだ。

普段なにかと美緒の世話を焼いている詩織にとっては、萌の母親の同情にもやもやした気分になる。
父親の細貝は最近また仕事をクビになり、新たな雇用先を探しているところで少々頼りないけれど、美緒は幸せだと思うようになった。

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