エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
『は? 君には無理だ。法学部卒の僕だって何年もかかっているのに』
『合格は無理かもしれませんけど、勉強したことは仕事で役に立つと思うんです』
『それでも、なぜ僕が教えないといけないんだ』

赤沼が迷惑げに眉を寄せると、矢城がニヤリとして詩織に声をかけた。
『俺が教えるよ。毎晩、寝る前に、俺の寝室でやろう』

矢城の寝室に机はなく、ベッドに座って……ということであろうか。

(それは勉強どころじゃなくなる気が……)
思わず詩織が赤面すれば、赤沼が慌てたように口を挟んだ。

『僕が教えます。休日二時間ほどなら付き合えます。寝不足になっては業務に支障をきたしますので、先生はおひとりでしっかり寝てください』

キョトンとしている美緒を除いた他の面々が笑った。
恥ずかしく思いつつも、詩織もクスクスと笑っていたら、正面に座る矢城と視線が合い、ウインクされた。

赤沼の扱いは任せろ……という気持ちが伝わってきた。
全ては矢城の策の内にあったかのように、赤沼と美緒にどう話せばいいかという詩織の悩みは一気に解消されたのであった――。

玄関前の掃除を終えた詩織は、暑さから逃げるように事務所内に入る。

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