エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
身の回りの世話を焼くのを許してくれるようになり、詩織は喜びを感じている。

(恋人の特権みたいで、嬉しい……)

午前中は依頼人の訪問と無料相談が一件ずつあり、矢城と詩織で対応した。
早朝から出かけている赤沼は、予定より時間が押しているので、戻らず次の訪問先に向かうと連絡が入った。

仕事中の矢城はからかってくることもなく、いたって真面目である。
当たり前かもしれないが。

詩織も静かにデスクワークに励み、時刻は十二時を過ぎた。
借りている赤沼の机から、隣に声をかける。

「先生、お昼に入れそうですか?」

ノートパソコンに向かっている矢城は、マウスを操る手を止めずに答える。

「そうだな、食べてしまおうか」

詩織は立ち上がって衝立の裏に回る。
台所に立ち、手早くサンドイッチを作り始めた。

パンに挟む具は今朝の内に仕込み済みなので、すぐにできあがる。
ハムとチーズとレタス、卵、スモークサーモンとクリームチーズの三種類だ。
昨夜作った冷製トマトスープも添えて食卓テーブルに並べた。

「できました」と声をかければ、矢城が肩を押さえて首を回しながら現れる。
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