エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
詩織の胸は熱くなり、湧き出る喜びで溺れそうになる。
愛しい人に同じように想ってもらえることは、これほどまでに幸せなことなのか。
プロポーズの喜びに、やっと浸ることができて、詩織の視界が滲んだ。

詩織が口を開こうとしたら、「数日待つよ。よく考えて」と先に言われた。
慌てて返事をする。

「あ、あの、先生のお気持ちは伝わりましたから、今お返事します。私を先生の奥さんにしてください。すごく、嬉しいです……」

矢城が一瞬だけ詩織を見て、口の端を上げた。
彼も嬉しそうではあるが、そうは言わない。

「いいの? 婚約は結婚と等しく契約だ。口約束も契約に含まれる。民法第五百二十二条に――」
「先生、お仕事のような話になっていますよ? プロポーズの承諾は契約だとわかっていますけど、それよりも今は喜びを味わわせてください」
「また悪い癖がでたな。すまない」

頭を掻く矢城をクスクスと笑ってから、詩織は頬を染めた。

「矢城先生の奥さんになれるなんて、夢みたい……」

まさに夢心地。頭の中には早くも純白のウエディングドレスを着た自分や、凛々しい矢城の礼服姿が浮かんでいる。
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