エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
結婚後は当たり前のように矢城と寝食を共にして、遠慮なく彼の世話を焼ける毎日が訪れるだろう。
間借りではなく、あそこが詩織の本当の家になるのだ。

(優しくて頼もしい、矢城先生の隣にずっといられる……)

じわじわと広がった感激で涙があふれ、目元を拭った。
矢城がフッと笑う。

「白状すると、無理強いできないと言っておきながら、結婚を承諾させるための二の手三の手を考えていた」

「そうだったんですか……」

警察署を出てから、やけに無口だったのは、疲労よりそれが原因らしい。

大きな手が頭にのり、わしわしと撫でられる。

「俺もかなり嬉しいからな。わかりにくいかもしれないが。その分、言葉で伝えるよ。詩織ちゃんは他の男にやれない。俺が生涯大切に守り抜く。君を守ること、それは義務じゃない。俺がやりたいことで、俺の幸せなんだよ」

「先生……」

義務ではなく幸せだと言ってもらえて、安心する。
困った時には頼ってもいいのだという気持ちにもなれた。

詩織の頬を濡らす涙はしばらく止まりそうにない。
ハンカチを出して拭っては、矢城を見つめた。

安堵と喜びと胸の高鳴り。
この最高の感情を伝えたいのに、適切な言葉が浮かばない。
矢城に釣り合うような大人の女性にはまだ遠いと思いつつ、「今夜は眠れそうにありません」と自分らしい言葉で表現したら、矢城の口角が吊り上がった。

「誘ってんの?」
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