エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
ハッとラブホテルの割引券を気にした詩織だが、とっくに矢城の手元にはなかった。
そういうところは、無頓着ではない。

「先生、みんなでなんの話をしていたの?」と無邪気に問われた矢城が、平然と答えた。

「リフォームの話。詩織ちゃんと俺の生活空間を、きっちり分けようと思ってな。そこに壁を作って見えないようにする」

その説明に、美緒の顔が曇った。

「詩織ちゃんと結婚したら、美緒はあっち側に入っちゃ駄目なの? みんなでご飯も食べないの?」

衝立の裏の生活スペースは本来、矢城のプライベート空間のはずなのだが、今は半ば共有状態になっている。
美緒は全員が集まっての夕食を楽しみにしているし、おやつを食べたり、時には宿題も食卓テーブルでしていて、急に立ち入り禁止と言われたら寂しく思うのも無理はない。

美緒を悲しませたくないと、詩織が慌てて言う。
「ノックして入ってきていいよ。時々みんなで夕食も食べようね」

気遣ったつもりであったのに、美緒にますます顔をしかめられた。

「詩織ちゃん、お嫁さんになれるからって、なんか偉そう……」
「えっ、そんな風にきこえた? ごめんね」

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