エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
しおりは硬く目を閉じて、小関の顔を消そうとした。
矢城は小関とは違うと信じたい。

詩織が数秒黙り込んでいると、冷蔵庫の扉が閉まる音がした。
スリッパの音がして、矢城が真後ろに立った気配がする。
詩織の頭にポンと手がのせられ、鼓動が跳ねた。
「冗談だよ」という言葉は、ヤクルトンについてのことらしい。

「余らせて捨てるより、飲んでくれた方が助かる。詩織ちゃんもそう思って飲んだんだろ? それを俺に言えばいいだけ。謝る必要はないんだ」
「は、はい……」

穏やかに低く響くその声を真後ろに聞きつつ、詩織は動悸を感じていた。
矢城が半裸であることをどうしても意識してしまう。
その気持ちは伝わらず、矢城が真面目に諭してきた。

「遠慮深くて謙虚で素直なのは、詩織ちゃんの可愛いところだけどさ。ここではもっと気持ちを口にしていいんだよ。君の家なんだから」
「私の家……?」
「そう。わがまま言ってもいい。無理、やめて、こうしたいと、もっと自分を出していこう」

ヤクルトンの件で矢城が『飲んだ?』と聞いたのは、詩織からの反論を期待してのことだったようだ。
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