ほろ苦彼氏の甘い口づけ
確認を交えて返すと、豊香の目がまん丸に開いた。両サイドの2人も、まるで静止画のように固まっている。



「……美羽さ、2年付き合ってるあたしよりも、交際期間、長いよね?」

「うん。今年の夏で6年を迎えるよ」

「ほ、本当に……その、5年と数ヶ月の中で、全くないの?」

「ない、けど……」



途切れ途切れに話す豊香に答えた瞬間、テラス席全体に「えええー⁉」と驚愕の声が響き渡った。


先ほどより1人多い3人分の声。

平日だからって騒ぎすぎだよ。お客さんは少ないけど、0人ってわけじゃないんだから。



「嘘でしょ⁉ お家デートの時、そういう雰囲気にはならなかったの⁉」

「全然。友達上がりだから、ドキドキよりも楽しいって感情のほうが強いんだよね」

「それなら、別れ際のキスは一体どういう流れで⁉」

「あれは……一緒に観てた映画で、主人公が恋人にほっぺキスしてたからマネしただけ」
< 10 / 86 >

この作品をシェア

pagetop