ほろ苦彼氏の甘い口づけ
まだ集まって30分も経っていないのに、早くも、春休みはデートしまくろう宣言。

付き合いたてならまだしも、そこそこ長い付き合いで、このセリフはなかなか出てこないだろう。



「この後、どこか行きたいところある?」

「ある! 駅前の広場に行かない? バレンタイン期間限定のイルミネーションがあるんだって。どう?」

「いいよ。駅ならここから近いし、ちょうど暗くなってくる頃だから行こうか」

「やった。ありがとう!」



お礼を言うと、嬉しそうに笑って私と同じ料理を口に運んだ。


黙っていたり無表情だと厳つい鉄仮面。
しかし、ふっと頬が緩めば、思わず胸がときめく甘々仮面。

その威力は、日々の疲れやストレスを一瞬にして消し去ってしまうほど。


人生の半分以上、何千回も見てきているけれど……今もこのように面と向かって笑いかけられると、胸がじんわり温かくなる。


やっぱりあの診断、間違ってたんじゃないかな。
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