ほろ苦彼氏の甘い口づけ
しかし、私達が入った学校は小学校時代の仲間が少なく、およそ7割が他校出身。
たとえ友達でも異性同士。そして中学生といえば、思春期に突入するお年頃。
下の名前で呼ぶと、茶化されたり、変な噂を立てられるかもしれない。
それが原因で気まずくなるのは嫌だったから、教室にいる時や周りに人がいる時は名字で呼んでいた。
「まぁ結局、私がヘマしたせいで意味なくなっちゃったけどね」
いちごチョコ味のドーナツを味わいながら振り返る。
あれは5年前の夏。6月最終日の朝。
強い雨風に煽られて傘が折れてしまい、ずぶ濡れで登校した時のこと。
『新淵、おはよう』
『おはよう、華……えっ、その頭どうした?』
『……傘、壊れちゃって』
『マジか……。そういやさっき風強かったっけ。災難だったな。着替えは……』
『……教科書とノートと筆箱しか持ってきてない』
『だよな。とりあえずこれ羽織って。服借りられるか先生に聞きに行こう』
たとえ友達でも異性同士。そして中学生といえば、思春期に突入するお年頃。
下の名前で呼ぶと、茶化されたり、変な噂を立てられるかもしれない。
それが原因で気まずくなるのは嫌だったから、教室にいる時や周りに人がいる時は名字で呼んでいた。
「まぁ結局、私がヘマしたせいで意味なくなっちゃったけどね」
いちごチョコ味のドーナツを味わいながら振り返る。
あれは5年前の夏。6月最終日の朝。
強い雨風に煽られて傘が折れてしまい、ずぶ濡れで登校した時のこと。
『新淵、おはよう』
『おはよう、華……えっ、その頭どうした?』
『……傘、壊れちゃって』
『マジか……。そういやさっき風強かったっけ。災難だったな。着替えは……』
『……教科書とノートと筆箱しか持ってきてない』
『だよな。とりあえずこれ羽織って。服借りられるか先生に聞きに行こう』