ほろ苦彼氏の甘い口づけ
ただでさえ、男らしく成長した姿に寂しさを感じたというのに。

気まずくなって会話が減り、卒業後は疎遠に。
そんな悲しい結末をたどるのは絶対に避けたい。


だって司は──。



『噂になってからかわれるくらいなら……付き合わない?』



横断歩道が青になる直前。

大切な友人の学校生活を守りたい一心で、一か八か交際を持ちかけたんだ。



「あの時の私はとてつもなく大胆だった……フラれてたら黒歴史になってたよ。何度も言うけど、本当にありがとう」

「いえいえ。こちらこそ、勇気出して言ってくれてありがとな」



上がった口角と緩んだ頬。好きな味のドーナツを食したのもあってか、機嫌がいい様子。

いいぞいいぞ、効果が出てきてるみたい。
そろそろ次の秘策に移ろうかな。



「ちょっとトイレ行ってくる。キッチンにティーバッグの箱あるから、もっと飲みたかったら好きに使って」



わざとらしさが出ないように言い残してリビングを後にした。
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