ほろ苦彼氏の甘い口づけ
暖を取りつつ、写真を撮ってはスマホゲームで遊んでと、楽しい時間を過ごしたわけなのだけど……。



『美羽、ちょっとこっち向いて』

『ん? どうした──』



ふいに呼ばれて顔を向けた瞬間、口を塞がれたんだ。



「あの時は一体何が起こったのかわからなくて、しばらく呆然としてたなぁ。覚えてる?」

「……うん」



唇には温かくて柔らかい感触、正面には目を閉じた司の顔。我に返るまで10秒はかかってたと思う。


コーヒーの味がしてちょっぴり苦いなと感じたけど……初めて恋人っぽいことができて嬉しかったっけ。

あれが……私の唇への最後のキスだった。



「こないだは外だったけど、今日は室内だからさ……」



上半身をひねって司の唇に視線を落とす。


抱き寄せなくていい。頬に手を添えなくていい。
贅沢は言わないから。ほんの一瞬触れるだけでいいから。

──司からのキスが欲しい。


顔を近づけながら目を瞑ったその時、ガシッと両肩を掴まれた。
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