ほろ苦彼氏の甘い口づけ
どうやらコスプレでも、後ろめたさを感じるらしい。

こういう変な部分で真面目なところも、昔から変わってないなぁ……。



「どうしても制服のままでしたいのなら、化粧を落としてきて」

「ええっ⁉ なんで⁉」

「それ、校則違反でしょ? 俺、どんなに容姿が整っていても、不真面目な人は恋愛対象外なんだよね」



両肩の次は唇を指でポンポン。彼の指先がほんのりとピンクに染まる。


メイクを本格的に始めてもうすぐ1年。

素顔はとうの昔に知られているけれど、大人っぽくなった姿を見せたくて、デートの日はいつもよりじっくり時間をかけている。

ちなみに今日は1時間近くかけて仕上げた。


それを落とす……すなわち、1時間分の努力を水に流すということ。

たとえほっぺでも、3秒にも満たない喜びのために全部落とすのは……。



「……着替えてきます」



天秤にかけた結果、計42分の努力を選択。

洗面所に置いた部屋着を身にまとい、笑われながら頬にキスをしてもらった。
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