ほろ苦彼氏の甘い口づけ
「えっ、買い物の途中じゃ……大丈夫?」

「平気。メインの買い物はもう終わったし。それに、なんとなく悩みがあるように見えたから」



すると、にんまりと笑った顔が近づいて、「相談があるなら乗ろうか?」と耳元で囁かれた。


……さすが医者の息子。鋭いところも健在だ。


沢村のことを『一見育ちが良さそう』と説明した理由がこれ。

親の仕事の影響からか、観察力が異常に高く、瞳や口の動きを見ただけで相手の心を読み取ってしまう。

そのため、嘘をついても瞬殺。彼の前では誤魔化しや隠し事が一切通用しない。


昔からよく相談に乗ってもらっているのだが、外見とのギャップが激しくて、仲良くなった今も恐怖を感じる時がしばしばある。



「……よくわかったね。ちょっと聞いてくれる?」

「もちろん。不満も疑問も全部吐き出してどうぞ」



とはいえ、助言が的確なので今回もお世話になることに。

階段を下りながら、ここ数日間の出来事を簡潔に話した。
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