ほろ苦彼氏の甘い口づけ
「やっぱり5年も経つと、マンネリ化は避けられないのかなぁ」

「まぁ、新鮮味はなくなるよね。それに今年で13年の付き合いなら、もはや恋人より家族みたいな感覚になりそう」

「まさにそれ。笑顔に癒やされたり気遣いに嬉しく思うことはあるんだけど、それ以外でドキドキしたことが少ないんだよね」



付き合いは長いものの、異性と同性。

会話の内容が同じでも、悩みまで同じとは限らない。それが性別特有の悩みだとしたらなおさら。

男心の理解度は沢村のほうが断然上だし、何かヒントを得ることができるかもしれない。



「沢村はどう思う? 好きな人にどんなことされたらキュンとくる?」

「ええーっ、特にないなぁ」

「本当に? 後ろからギュッて抱きしめられるとか、肩に寄りかかってくるとか、ないの?」

「うーん……しいて言うなら、笑顔かな。しょうもない話で笑い合えるだけでも俺は充分だよ」



期待を寄せて尋ねたみたけれど、私が欲しかったタイプの回答ではなかった。
< 45 / 86 >

この作品をシェア

pagetop