ほろ苦彼氏の甘い口づけ
あざといモテテクなんか必要ない。
ただ僕の隣で笑ってくれればいいんだ。

……みたいな感じかな?



「なるほど。その様子だと、まだ元カノのこと引きずってるっぽいね」

「……悪い?」

「全然。私も同じ立場だったら、消化するまで時間かかるだろうし」



19歳の人間にしては達観してる答え。だけど、過去を踏まえるとより説得力がある。

喧嘩別れして仲直りできないまま永遠の疎遠になってしまった。……そう考えたら、傍にいてくれるだけで充分か。



「とにかく、余計な心配は不要。新淵は華江のことをちゃんと大切に想ってるから大丈夫。思いきり楽しむ姿を見せればいいんだよ。こんな風に」



ハキハキと述べた彼が、サービスカウンターの近くに立てかけてある看板を指で差した。



「え、これ思いきり笑ってなくない?」

「例えばの話だよ。ふと横を向いた時にこんな風に笑ってたら、嬉しく思わない?」

「まぁ、嬉しいけど……」
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