ほろ苦彼氏の甘い口づけ
電話口の向こうで溜め息が聞こえた。


言われてみれば、偶然会った場所に行きつけのお店があるとは限らないか。

それに美羽なら、美味しそうと思うより先に、現実離れした値段に目を点にするだろうし。



「良かった。奢るから好きなもの選びなよとか言ってなくて」

【ふははっ。言うわけないじゃん、人様の彼女に。でも、チョコは買ってもらった】

「え? そっちが奢ってもらったの?」

【違うよ。相談に乗ってくれたお礼にって意味で】

「あぁ、なるほど。高いやつねだってはないよな?」

【大丈夫だって。900円のだから】



庶民の金銭感覚に合わせたと言わんばかりの回答。

900円でも、一口チョコ6個入りとか、内容によればそこそこ高い部類に入るんじゃ……。


しばらくバイト休止中な上に、来週はお菓子パーティー。急な出費で負担かかってないかな。

実家に帰った時に生活費をもらっている可能性はあるかもだけど。
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