ほろ苦彼氏の甘い口づけ
純粋なのか、それとも理解した上でなのか。


券はペラペラしたチラシのようなものではなく、名刺みたいに程よい厚みがあるもの。
写っていたホテルの外観もとても立派だった。


しかし……裏を見た途端、胸騒ぎがした。


初回限定1000円割引の文字に、淡いピンクのハート柄の背景。

美羽の場合、前者の純粋な気持ちで受け取った可能性が高い。
けど……誘ってきたタイミングがキスを断った直後。


まさか、夜景を観ながら……?

そう直感が働き、納得できそうな理由を付けて断ったのだ。



【まぁ、元からあまり恋人感なかったし、抵抗あるか】

「別に嫌なわけじゃないんだよ。ただ少し、不安があるだけ」



回避に成功し、安堵したのもつかの間。数日後のお家デートで再びキスをせがまれた。


前回断ったせいかなと思ったのだが……。

もしかしてあのお誘いは、後者のつもりでだったのではないか。

また直感が働いて……不安が大きく膨れ上がった。


名字で呼んでいたのも、制服で登場したのも、やたら過去を振り返っていたのも。

全部、俺とキスするための伏線だったのかな……と。
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