ほろ苦彼氏の甘い口づけ
確信した瞬間、逃げ出したい衝動に駆られた。
だけど、さすがに2度も拒否するのは申し訳ない。

内心ドキドキしつつ、条件を出して頬にした。



「だからさ、興奮を落ち着かせる薬、ない?」

【ない。安定剤や抑制剤はあるけど、新淵が欲しい種類には当てはまらない。それに、処方箋なしにあげることはできません】



きっぱりと言い切られて肩を落とす。

それもそうか。検査なしに飲ませたら体に異変を起こすかもしれない。
治療費以外で責任取れないし、そりゃ無理に決まってるか……。



「じゃあもう、俺が腹をくくるしかないんだな」

【それが1番だよ。思いきって打ち明けな】

「……うん」

【弱気だなぁ。大切な彼女なんだろ? だったら本気でぶつからないと】



消え入りそうな声で返事をした俺に、宗星は辛口で切り込んできた。



【いい? こういうのは長引けば長引くほど危険なんだ。今の新淵は、困惑したことを言えずに溜め込んでいる状態。これが続くとどうなるかわかる?】
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