ほろ苦彼氏の甘い口づけ
それはそれで逆に怪しまれそうじゃない? 嘘ついても結局バレるし。

と思ったけど、逃げるが勝ちって言うもんな。



「よし。じゃあそろそろ戻ろうか」

「えっ……あぁ、うん」



ドアに向かう司の後を追う。

……だよね。あの電話の後では少し気まずいか。それに暖房付けっぱなしだからお菓子も溶けちゃうし。



「ごめんな。続きは来月でいい?」

「……うん」



しょんぼりしていたら、振り向いて顔を覗き込んできた。

図星をつかれて恥ずかしい。
でも、沢村の時とは違ってそこまで嫌じゃない。



「忘れないでよ?」

「美羽こそ。忘れるなよ? 割引券」

「っ……ちゃんと持っていくって!」



言い返すも、クククッと笑われてしまった。

甘々仮面には、どうやら私を弱体化させる効果も含まれているみたい。


不安から始まった5回目のバレンタイン。

酔って喧嘩して泣いてと、終始騒がしかったけれど、過去最高のとびきり甘い1日になりました。



END
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