【短編】桜咲く、恋歌にのせて
この恋、停滞中動きあり



彼は突然やってきた。

まったく……。
何をしでかすか予測不能。

あ〜っ。
何だかあの日を思い出す。


「また今日は、どうしてこちらへ?」

「結依に会いに来た以外何があるっての?」


クスクス笑いながら、開いたドアの間からズカズカと部屋に上がり込んでくる。


「学校は?」

「んー、明日から休みだし」

「で、もう終電ないけど、今からどうするのよ」

「決まってんじゃん」


ニヤニヤと笑いながら私に近づいてきて体が密着しそうなくらい傍に寄り、見下ろしながら悪魔のほほ笑みを見せた。


「ここに泊まるから」


……やっぱり。

そう言うと思った。

私は頭を抱え込み、豪快にため息をつく。


「何考えてるのよ」

「ん? 一緒にいたいってだけだけど?」


嬉しいような、困ったような。

複雑な心境。

って、もうくつろいでいるし。


「結依〜っ、酒買ってきたけど飲む?」


……はぁ。


「相変わらず、だね」


追い返したって泊まる場所はないだろう。

何たってGW真っ只中、どこのホテルも満室に違いない。


「今日だけだからね、ヒデ!」

「おぅ。じゃ飲もうぜ〜」


まったく悪怯れる様子もなく、既にビールを飲み始めていたヒデを見て思う。


私……、
何でこんなやつ好きになったんだろう。



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