【短編】桜咲く、恋歌にのせて
「頑固なんだよ」
ズルッ。
ってズッコケルかと思った。
真剣な顔してそんなこと言う?
期待した自分が恥ずかしい……。
「あー。そう言えばさ、結依は地元に戻んないの?」
「お盆には帰ると思うけど?」
「じゃなくて……」
ポケットに入れていた手を出してポリポリと頭を掻き出す。
口籠もりながら「あー」とか「はぁー」とかいう声を漏らしながら。
それ以前に人に向かって“頑固”って言うだけ言って、それ以上何もなしって。
そんなヒデに突っ込みを入れようとしたら、
「だから、地元で仕事しないのかなって」
ほんの少しだけ。
照れたように頬を緩ませて覗き込んできた。
一歩後退りしてしまう。
「一年間は東京で研修だし、その後はそのまま本社に残るか、それとも支社に行くのか……まだ分からない、けど何で?」
「意味分かんないの?」
キョトンとした顔つきで話しかけるヒデに首を傾げた。
「はぁ……。このニブチン!」