【短編】桜咲く、恋歌にのせて
何も言い出さない私に痺れを切らしたのか、ヒデが大きくため息をついた。
「もういい、友達やーめた……」
体を反転させて背を向けて歩き出す。
友達やめた、って?
いつまでも振り向かない私のこと、もう諦めたってこと……?。
いつも通りの声色だけど背を向けたから表情を読み取れないし、そんな行動を起こしたヒデが何を考えているのか分からない。
その言葉の真意を聞くのもなんだか怖い。
もしかしたら、ヒデと会うのもこれが最後かもしれない。
そんなことが頭をよぎる。
「結依、つまみ買いに行くよ」
一瞬だけ振り向いて、寂しそうなほほ笑みを見せるヒデ。
変化が訪れる――。
耳に届く木々のざわめく音。
バクン……バクン……。
激しく音を立てる胸の鼓動。
風にあおられ、なびく髪を手で押さえながらヒデの後ろ姿を見つめる。
なぜか強く、強く感じる。
私とヒデの間柄はいつまでもこのままでいられない。
今伝えないと、終わり。
もう二度と会えない、と。
頭でグダグタと考えて何一つ行動を起こさなかった私が、頭を真っ白にして駆けていた。
行かないで。
離れないで。
私、まだ……。
「ヒ……デッ!!」