【短編】桜咲く、恋歌にのせて
「お待たせ」
「結依の手料理? 最高〜っ」
「茹でただけだから」
ビール好きな私の冷蔵庫に常備している枝豆。
それを茹でただけで、どうしてこうも感激できるものなのか、謎。
他にもたこわさにキムチ、チーかまにソーセージ。唐揚げにイカゲソ。
コンビニで買い溜めしていた、ありとあらゆるつまみをテーブルにひろげる。
飲んでいる時のヒデはかなりの大食いだから。
「さっすが結依! つまみ揃ってるな〜」
なんて言って嬉しそうに食べだすヒデ。
音がないのも何だか気まずくて、特に見たい訳でもないのにテレビを点けて視線を移す。
「……で? どうしたの?」
私の問い掛けにヒデはチラリと視線をこちらに向け、ビールを手渡してきた。
とりあえず一気に飲み干して様子を伺う。
「だから、結依に会いにきたって言ってるじゃん」
愛しそうに見つめる視線が
痛い……。
あの頃と何一つ変わっていない。
そんなヒデに圧倒されそうになる……んだけど。
「連絡もしないで来るなんて、私がいなかったらどうするつもりだったのよ」
「帰ってくるまでずっと待ってるつもりだったけど?」
何の迷いもなくあっけらかんと答えてくれて、肩の力が抜けてしまった。